たとえ嫌だと言われても、俺はお前を離さない。
それから二十分ほど車を走らせた頃、目的地に到着したようで、車はゆっくりと停止した。
辺りは真っ暗で、途中から完全に知らない道を走っていたから、ここがどこなのか全く分からない。
……今いる場所が、道は道でも、道路じゃなくて山道であることだけしか分からない。
さっきまで車はガタガタ音を立て、足場の悪い山道をずっと登ってきたのだ。
灯りはないし、近くに私達以外の人がいる気配もない。
何でこんな所に来たんだろう?
「桃城、車降りて」
「え? は、はい」
言われるがまま、シートベルトを外して車から降りた。
やっぱり、真っ暗。辺りにお店とかは当然ない。
思ったより肌寒さはないけらど、それでも時折吹く風は冷たく感じる。
先生の目的が分からないから少し不安になる。
ちょっとついてきてくれる? と言いながら先生が歩き出すので、私も彼の後ろを追い掛けた。
先生は何も言わずに進んでいく。
足元の悪い山道をゆっくりと歩いていく。
すると数メートル進んだ先で、先生が足を止める。
立ち止まった理由は分かった。
「わあ……」
眼前に広がる綺麗な夜景。
この山から、街並みをこんなに綺麗に見下ろせるなんて知らなかった。
昼間に見渡す景色もきっと綺麗なんだろうけど、この時間は眩しいくらいライトアップが輝いていて、思わず心奪われそうになる。