たとえ嫌だと言われても、俺はお前を離さない。
「凄い……」

思わずそうこぼすと隣にいる先生は嬉しそうに、

「だろ? こんなに絶景なのに穴場なんだぜ」

と無邪気な笑顔をこちらに向ける。
高校生の頃の私が好きだった笑顔だ。


本当に綺麗。赤、青、オレンジ、様々な色のライトが辺り一面に散らばっている。
宝石箱をひっくり返したような景色、なんて言い方はさすがに大袈裟だけど、もし高校時代の私が先生とこの景色を見ていたら、そう感じるくらいには幸せで満たされていただろうな。


「でも、何で私をこの場所に連れてきたんですか?」

こんなムードのある所にわざわざ私を連れてくる理由なんてないんじゃないかなとは思った。

でもすぐに、〝私がこういう景色が好きそうだと思って気を遣って連れてきてくれたのかな〟と思ったのだけれど、先生は。


「……急に、桃城と二人で見たくなったんだ。この綺麗な景色を」


と、何だか変な言い方をしてくる。今ここにいるのが高校時代の私だったら、絶対に勘違いしてしまいそうな……まるで告白のような言葉だ。


「先生。そういう言葉は、特別な人にだけ言った方がいいと思います」

笑い混じりにそう返してみた。ちょっぴり天然でそそっかしい先生のことだ。〝あっ、そうだよな! ごめんごめん!〟って言ってくるのだと思ったのに。



先生は、何も答えずに真剣な瞳で私を見つめてくる。


そして。



「じゃあ、間違ってないよな」

「え?」


「桃城に、俺の特別になってほしいんだ」
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