たとえ嫌だと言われても、俺はお前を離さない。
【ちゃんと帰っているか?】
……何だろう、このメッセージ。
喧嘩の内容について謝る訳でもなく、だけど心配してくれている。
部長も、仲直りのきっかけを探しているのかな。そうだとしたら、私は嬉しい。
喧嘩しているというのに、部長の不器用さが全面的に出ているこのメッセージを見て、思わず笑ってしまう。
ああ、私やっぱり部長のことが大好きなんだ。
強引だけど、優しくて、子供みたいに不器用で。
でも、そもそも喧嘩の原因だって、部長は私のことを心配してくれていたんだ。
部長も私もあの時はそこまで予測出来なかったとはいえ、実際、私は先生にキスされそうになった訳だし……。
私は部長からのメッセージに返信しようと、画面上のキーボードをタップして文章を打っていく。
でも途中で、やっぱり電話にしようと思い、通話ボタンを押した。メッセージが届いたのが十五分前ならまだ起きているだろう。
耳にあてた携帯の向こうで、プルルル……というコール音が聞こえる。
三コール目が途切れ、代わりに【もしもし】という部長の声が耳に届いた。聞き慣れているはずの彼の声なのに、そう言えば電話で話すのは初めてだからなのか、急にドキドキしてきた。
「もしもし。……別に用事はないんですけど」
喧嘩中なのもあって、ついそんな可愛げのない言い方をしてしまった。
用もないのに電話してくるなと言われるかもしれない、と思ったけれど、彼は【そうか】と答えるのみだった。
怒っているのか、そうじゃないのかも分からない。