たとえ嫌だと言われても、俺はお前を離さない。
願いと真実
一晩寝て過ごしたら、部長はいつも通りに接してくれていた。

いつも通りに強引だけど、いつも通りに私を愛してくれる。


また気まずい思いをするのは嫌だなと思い、私もそれ以上は”横取りの件”について尋ねることは出来なかった。



そうして三週間が過ぎた。


日が経てば、私の記憶や意識から”横取りの件”は薄れていくだろうと思い続けていたのだけれど、逆だった。日が経てば経つほど、余計に気になって仕方なくなっていた。


だけど、確かめる術がない。部長に聞いても答えてはくれないし、かと言って他に尋ねられる人もいない。

せめて誰かに相談したいと思うけれど、部長がいないところで私の友達にこのことを勝手に話すのは良くないと思った。何が真実か分からないし、それでなくても彼と先生のプライベートなことだから。


それでも、これ以上自分の中で抱えているのは苦しい。

誰かに、ほんの少しでも話を聞いてもらえたら……


「あ」


ふと頭をよぎったのは”あの人”の顔だった。
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