たとえ嫌だと言われても、俺はお前を離さない。
「桜井さん。お願いです。あの二人に本当のことを話してもらえませんか?」

フォークは皿の上に置いて、彼女の目を真っ直ぐに見据えてお願いした。高校時代からの長い付き合いなのに、そんな誤解があったままじゃ切ない。


「でも、もう十年以上前の話だし……。それが原因で二人の仲がこじれたならともかく、未だに仲良くやってるじゃない。今更誤解を解く必要ある?」

「薫さん、凄く切なそうな顔をしていたんです。亮さんもきっと気にしてるんです。だから……」

「そんなにあの二人のことが気になる? じゃあ……綾菜ちゃんが直接言ったら?」

そう言いながら、桜井さんは私の後方を指差す。何だろうと思いながら、彼女が指差す方に振り返ると……


「ぶ、部長!? 先生!?」


なんと、話題の中心人物である二人が揃って店にやって来た。


「綾菜。一人で来てたのか?」

言いながら部長は私の右隣に座った。それに続くように、先生は部長の右に腰掛ける。


「えと、まぁ……」

「ん?」

歯切れの悪い私をしばらくじとっと凝視した後、


「まさか、桜井を通して例の件について探ってたんじゃないだろうな」


と、いつもより低い声で聞いてきた。

図星なので何も答えられない。
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