自由帳【番外編やおまけたち】
「くれぐれも、戸締りはしっかりなさい。知らない人を中に入れてはいけませんよ?」
「分かってます」
戸口へ歩き出したイルミスの後を、ライナがくすくすと笑いながらついていく。戸口まで辿り着いたイルミスは、振り返りそんな様子のライナを窘める。
「分かっていません。貴女は前も知らない者を家に入れようとした」
「あの時は、イルミスさんの職場の方でしたでしょう? 知らない方ではありません」
イルミスは、ことあるごとに以前ライナの元へやってきた自身の部下の話を持ち出す。この辺りの地域の警備を指示していたはずが、気付けば自分が思いを寄せている女性と必要以上に仲良くしていたのだ。それがイルミスにとっては、非常に面白くなかった。
その話を持ち出す度に感情を露わにするイルミスの姿が、ライナは可笑しくて堪らない。案外子どものようなところもあるのだ、と。
「とにかく、駄目ですからね」
「ふふ、分かりました」
少し心配性な夫が可愛らしいと思える瞬間があることを、一緒に過ごすうちに知ることができた。ライナの毎日は、新しい発見ばかりだ。