自由帳【番外編やおまけたち】
昨日までの雨も上がり、憂鬱な気分も晴れた日曜日になった。
……明日からまた仕事だと思うと、結局また憂鬱な気分に舞い戻ってしまうけれど。
長く続いていたプロジェクトがようやく終わり、久し振りに自由な土日となった。昨日は遅くまで続いた打ち上げの影響で昼過ぎまで惰眠を貪ってしまったため、日曜日くらいは朝のうちに活動しておこうと心に決める。
しばらくお預けだったお気に入りの漫画雑誌を買い込もうとコンビニへ向かう。本当は本屋に行くことができれば一番いいのだが、生憎最寄りの駅前には大きな建物が無いため、いつも家から最寄りのコンビニで調達することになってしまう。
ーーえ? 本屋まで頑張って行けって? いやいや、買ったらすぐ読みたいし、無理無理。
そんな、久し振りの穏やかな休日となるはずだった。いや、まあ……ある意味穏やかではあるか。
それは、コンビニの中、出入り口すぐ隣の雑誌コーナーに着いて数分経ったときに起こった。
目当ての雑誌を見つけて中をパラパラと捲って確認していると、目の前の大きなガラスに何やらうごめく影。最初は無視していたが、影がどうしても視界に入ってきてしまい、気になって顔を上げた時だった。見知ったその顔に、思わず動きが止まる。
(あれ、松井)
こちらの存在には一切気付かずに、コンビニの大きな窓ガラスをーー正確に言えば、ガラスに映る自分自身をーー真剣に見つめている、同期の松井の姿があった。
普段はオフィスカジュアルといった若干固めの仕事用の服装をしているが、今日は休日のため完全な私服だ。
紺地に小花柄のワンピースは、控え目な松井にぴったりだなと思った。
って、そうじゃなくて。
(何やってんだ?)
その松井は控え目とはとても思えないような行動をしていた。ガラスの一点を凝視して、必死な形相で前髪を引っ張っている。
心なしか、普段会社で見るよりも化粧も気合いが入っているようなーー。
ーーははん、分かったぞ。さては松井、これからデートだな。
松井が営業の染谷と付き合っているのは周知の事実だ。染谷もまた同期で、この二人が付き合うに至るまでは焦れったくて見てられなかったけれど……これは話せば長くなるから割愛しておく。つまりひと言で言えば、何とも人騒がせな連中だ、ということだ。
それでも、ずっと心配していた松井が元気になって良かった。
……だから心配させてくれた分、少しくらいからかったって罰は当たらない、よな?