自由帳【番外編やおまけたち】
「うーん! いい天気ですねえ!」
車を降りた私は、思いっきり伸びをする。駐車場近くの立派な木の看板には〝国営公園〟と書かれていた。
「結構混んでるな」
小林さんが辺りを見回しながら呟く。ガイドブックに載っているだけあって、観光客が多いようだ。
自分のような立派な格好をしている人は見当たらず、恥ずかしさからそっと小林さんのそばへ寄る。
「はぐれないように、手でも繋ごうか?」
気付いた小林さんに意地悪そうに笑われて、私はぶんぶんと首を振った。
ーーこんなに派手な格好した人間がはぐれるわけがない!
この高原は標高が高いため、貴重な植物が沢山群生している。観光用に作られた道だけが通行できるように整備されており、私たちは慎重に進んだ。
「あ、見てください! あの鳥かわいいです!」
「ああ。珍しい色だな」
時折立ち止まってするそんな他愛もない会話が、嬉しい。
いつしか自分の場違いな服装のことなど全く気にならないくらいに、私はこの高原に魅了されていた。
高い空、おいしい空気、どこまでも続く大自然。見たこともない植物に感動し、木の上をちょこまか動くリスを見つけては癒される。
そんな非日常のこの空間と、もちろん隣を歩く人のお陰で、楽しい気持ちが倍増されている。