手をつないでも、戻れない……
 長く押しつけられたキスは、苦しさを増して、息をしようと口を開けた。

 その、間を割るように、彼の舌が私の舌に絡みつく。
 
 頭の中では、抵抗しなければと思うのに、力は抜けていくばかりだ。



 彼は、何を考ええいるのだろう…… 

 このまま、進んでしまう事は、間違っていると分かっているはずなのに……


 彼の唇は、貪るように激しくなっていく。



 やっと、唇が離れたかと思うとそのまま首筋へと伝わってくる。



「あっ……」

 思わず、力ない声が漏れてしまった。

 すると、彼の手が私のカーデガンを肩から外し、パタリと下に落ちた。

 そして、ノースリーブの肩が彼の手に捕まる。



「俺、勝手な事しているよな」

 耳元で切なそうな彼の声が響いた。

 その声でさえ、背筋をゾクッとさせられる。



「そうよ…… 勝手すぎる…… どうしていいか分からないよ」

 そう言っているのに、私の手は、彼のスーツを脱がせていた。


 離れたくなかった……



「今だけは、何も考えたくない…… ごめんな……」


 彼は、また、私に唇を優しく重ねてきた。


 何を考えても、どんな言葉を発しても、もう、止める事が出来なくなっている事を、自分でも分かってしまった。
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