手をつないでも、戻れない……
「あの……」

「はい」

 雅哉も、表情を固く変えた。

 私は雅哉の目を見た。


「せっかくの、お話しなんですが…… 申し訳ありません」

 私は頭を下げ、下を向いた。


 それ以上何を言っていいか分からないし、雅哉の顔を見れない。


「顔…… 上げて下さい。そんな気はしていました」


「えっ?」

 驚いて思わず顔を上げた。



 彼は、ビールをぐっと飲むと、小さくため息をついた。



「理由きかせてもらえませんか?」


「理由ですか?」

 正直、答えに困る……


「僕、自惚れかもしれないけど、先週告白した時は、ちょっと期待していたんです。水嶋さんの事は、僕なりによく知っているつもりだし…… 三年も片思いしてるんですよ……」

 雅哉は、罰が割るそうに笑った。



「ええ? 三年前なんて一緒に仕事していないじゃないですか?」


「ええ。 僕、税務課にいた時から、時々福祉課に来るあなたを見ていたんです。福祉課に異動になった時には、神は僕の味方だと思いましたよ」

 雅哉は恥ずかしそうに言った。


「ごめんなさい…… 全然知らなくて……」


「いいですよ、そんな事は…… でも、美緒さん、何かあったんでしょ? 急に好きな人でも出来ましたか?」


「あっ……」


 名前で呼ばれた事と、気持ちを見透かされた事に、驚き声が出ない……
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