手をつないでも、戻れない……
「何?」
ゆっくりと振り向くと、彼の視線と重なる。
じっと、見ていた彼の目が、ふっと我に返った気がした。
「あ、美緒の車、エンジンの音が変だぞ。今度、見てやるから会社に持って来いよ」
そう言いながら、彼は胸のポケットから名刺入れを出した。
慣れた手つきで出した一枚の名刺を、私に差し出した。
「あ、ありがとう」
名刺を受け取り目をやると、大手の車メーカの営業部長となっていた。
昔と変わらぬ就職先のままだった。
「明日、持って来いよ!」
「ええ。明日?」
思わず、怪訝な声が出てしまう……
「早いほうがいい」
「まったく、営業上手いんだから」
私は、眉間に皺を寄せた。
「じゃあ、明日十時な」
彼は、ニコリと笑って背中を向けて歩きだした。
そうだ、ただの車の点検。
彼にとっては、仕事の内にしか入っていない。
私だけが、あの時のまま、彼を忘れられずにいる事に、ふぅっと小さなため息が漏れた……
建物の入口へと向かう彼の後ろ姿は、あの頃と変わらぬ凛々しいい。
懐かしい思い出へと整理のつかないままの記憶がよみがえってきた。
ゆっくりと振り向くと、彼の視線と重なる。
じっと、見ていた彼の目が、ふっと我に返った気がした。
「あ、美緒の車、エンジンの音が変だぞ。今度、見てやるから会社に持って来いよ」
そう言いながら、彼は胸のポケットから名刺入れを出した。
慣れた手つきで出した一枚の名刺を、私に差し出した。
「あ、ありがとう」
名刺を受け取り目をやると、大手の車メーカの営業部長となっていた。
昔と変わらぬ就職先のままだった。
「明日、持って来いよ!」
「ええ。明日?」
思わず、怪訝な声が出てしまう……
「早いほうがいい」
「まったく、営業上手いんだから」
私は、眉間に皺を寄せた。
「じゃあ、明日十時な」
彼は、ニコリと笑って背中を向けて歩きだした。
そうだ、ただの車の点検。
彼にとっては、仕事の内にしか入っていない。
私だけが、あの時のまま、彼を忘れられずにいる事に、ふぅっと小さなため息が漏れた……
建物の入口へと向かう彼の後ろ姿は、あの頃と変わらぬ凛々しいい。
懐かしい思い出へと整理のつかないままの記憶がよみがえってきた。