手をつないでも、戻れない……
「やっぱり…… 今日の美緒さん、いつもと何か違う気がしたから……」


「ごめんなさい……」

 私は、頭を下げた。


「別に、謝る事は無いですよ…… でも…… 好きな人と上手く行きそうなんですか?」



「えっ…… ま、まあ」


 どう答えていいかわからず、曖昧に答えているのに、雅哉は、未だ追求してくる。



「美緒さん、幸せですか?」


 あまりの、胸に刺さる質問に、私は黙ってしまった。


「……」


 しばらく、黙ったままの時間が流れた。



「僕は、まだ、諦めなくて良さそうですね……」


「そ、そんな……」


 私は、窓の外を見て、頭の整理をする。



「迷惑かけるつもりはありませんから、美緒さんが幸せだと解れば、きっぱり身を引きます」



「やめて下さい…… きっと、私の事を軽蔑します……」

 私は、両手をテーブルの下でギュウッと握った。


「それでも、今は、僕は諦めませんから……」


 いつも、穏やかな顔の雅哉とは違い、きりっとした瞳の奥に、男らしい一面を見た気がした。
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