手をつないでも、戻れない……
二人の男
彼からは、ほぼ毎日のように、メールが送られてくる。

 内容はこれと言った内容では無く、日々のふとした事や、時には私をいたわるような言葉も添えられていた。

 思わず顔がにやけてしまうが、その反面、こんな事をしていちゃいけないと、罪悪感に胸が痛む。


 メールの着信音に、スマホを見る。

 彼からだ……


『今週の金曜どう?』


 私は、胸が高鳴った事を認めるしかない。


 あの夜から、二週間が過ぎていた。


『いいよ』


『また、駅前で待ってる……』

 その言葉に少し考える。


 外での食事は、一目が気になって落ち着かない。


『私のアパートでどう? 高級ステーキとはいかないけど』


『わかった…… 楽しみにしている……』


 金曜日が待ち遠しくて仕方なく、時間があれば、夕食のメニューなど考えていた。



 だが、ふと我に返り、自分の部屋のベッドの上で膝を抱えた。


 これは、誰がどう見ても不倫というやつだ…… 


 まさか、自分がそんな事をするなんて思っていなかった。


 こうなってしまった以上、最悪の時の、自分が出来る事を真剣に考えるしかなかった。
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