手をつないでも、戻れない……
 彼が壁に寄り掛かり、私の頭の下に腕を回し支えている。

 しばらく、そのまま息が落ち着くのを待った。


「ねえ…… もう少し待てなかったの?」


 私は、周りに散らばった下着とに目をやり、彼を睨んだ。


「美緒の顔みたら無理だった……」

 そう言って、彼は私のおでこに軽くキスを落とした。



「シャワー浴びて来る」

 私がそう言って立ち上がると、彼も腰を上げた。


「俺も」


「一緒は嫌よ」

 私はピシッと言った。



「玄関で、はだかのまま居られるかよ」


 彼はそう言って、急いでバスルームに向かった私の後を着いてきた。


「嫌だってば!」


「気にするな」

 彼は、半ば強引にバスルームへ入ってきた。


 慌てて、シャワーのお湯を出し、体に掛ける。


「うわ―。色っぽい……」

 彼がいつの間にかしゃがんで、見上げていた。


「ばか!」


 そう言って、私はバスルームを飛び出した。


 新しい下着と、別のワンピースを身に着ける。


 玄関に散らばった下着と服をかき集め、場脱衣カゴの上に、彼の物だけを置いた。


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