手をつないでも、戻れない……

「ねえ…… メールとか、ちゃんと消しておいて…… 私の名前も分からないようにといた方が……」


「大丈夫、心配するな……」

 彼は、私の頭をポンと叩いた。



「あのね…… お願いがあるの……」


「何?」


 彼は、不思議そうに首を傾げて私を見た。



「もし、まずい事が起きたら、私の事、マリだって言ってくれる?」



「どういう事?」

 彼は怪訝そうなで眉間に皺を寄せた。


「もしもの時の切り札よ!」


 私は、明るく言ったが、彼は納得出来ていない顔をしていた。



「一人で、無茶するなよ」


「だから、もしもの時、お願い……」


 私は、真剣に真直ぐ彼を見た。



「分かった……」

 彼は、負けたように言った。



「絶対忘れないでね」


「ああ…… でもな、美緒が思っているより、俺も真剣だから…… 今は約束出来なけど。必ず……」


 そう言って、彼は私の唇を奪った。
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