手をつないでも、戻れない……
 次の日、役所へ、打ち合わせと書類の提出に向かった。

 あれから、雅哉とは、会議などでは会うが、これと言って話をする事もなかった。

 気まずかったのも、初めだけで今は普通に会話をするが、諦めないと言った言葉が、頭の片隅で気にはなってはいた。


 役所の自動ドアが開き、予想外の顔が現れた……


「樹さん……」


「美緒……」

 驚いてお互い顔を見合わせるが、ふっと、笑みが漏れた。


「仕事?」


「ああ、書類を取にな…… コーヒーでもどうだ?」


 彼は、ロビーの奥にある自動販売機に目を向けた。


 私は時計に目をやり確認する。



「そうね…… 少しなら……」


 缶コーヒーを買ってもらい、なんとなく人があまり通らない、外のベンチに座った。
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