手をつないでも、戻れない……
「夕べは悪かったな……」


「ううん」


 私は、首を横に振る。

 我儘言うほど子供でもないし、言っても仕方ない。

 そうかと言って、理由を聞きたくない訳では無いが、知るのも怖い……



「娘が、部活で怪我してな……」


「えっ!」


「いや、たいした事は無いが、大会近いから……」


「たいした事なくて良かった……」

 勿論それは、本心からだ……


「ああ…… また……」


 彼は、何か言いかけのをやめ、代わりに熱い眼差しを向けた。

 私も彼を見つめる。


 彼は、小さく息をつくと立ち上がり、くしゃりと私の頭を撫でて、くるりと背を向けた。



 彼の姿が見えなくなると、手にしていた缶コーヒーを飲み干し立ち上がった。


 その時……



「あの人が、美緒さんの彼氏ですか?」


 彼と入れ替わるように近づいてきたのは、雅哉だった。
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