手をつないでも、戻れない……
 お手拭で手を拭くと、私の方から口を開いた。


「よく、来るんですか?」


「うん、時々ね…… あの、焼き鳥焼いているおじさん、高校時代の野球部のコーチだったんだ。だから、ここは野球部のやつらのたまり場なんだ。でも、焼き鳥めっちゃうまいからさ」


 しばらくして運ばれてきた、ビールと焼き鳥に、思わずお腹がぐるーうっと鳴った。

 顔を赤らめた私に、雅哉は、乾杯とジョッキを上げた。


 一口入れると、じゅゎーっと出る肉汁に思わず、顔が歪んでしまった。


「おいしい……」


「だろ? レバーもいけるんだよ」


 ビールと焼き鳥のハーモニーが溜らず、パクパクと進んでしまう。

 合間に食べる、雑魚サラダもさっぱりしているのに、味がしっかりあってたまらない…… 


 脅されて来た事なんいて、すっかり忘れて、おしゃべりと焼き鳥に夢中になっていた。
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