手をつないでも、戻れない……
「よかった。喜んでくれて。最近、しんどそうな顔していかたら。仕事も大変だろうけど、それだけじゃないのかな?って」


「そうかな…… 元気だったわよ」


 私は、あえて明るく言ったが……


「まあいいよ……」


 雅哉は、そう言ってジョッキを口に運んだ。


 雅哉は、仕事をしている時とは、違う男らしさのある人だと思う。

 そして、すごく優しい人だと思う。

 彼とは違う優しさかもしれない…… 

 いくら、雅哉が側で笑っていても、私は彼を思い出してしまう……



「なあ、そんなに、あいつの事が好き?」


「えっ」

 驚いて雅哉の顔を見る。


「時々、あいつの事考えているだろう?」


 私は、コクンと肯いた。



「彼とは、十五年も前に付き合っていた人なの…… 今になって、誤解が溶けたっていうか……」

 私は、ポツリと言った。


「そっかあ…… もっと前に告白しておけば良かったな……」

 彼は、残念そうな目をした。


 私は、首を横に振った。


「もっと、傷つける事になっていたと思う……」


「ひでぇ! 今の言葉、十分傷つくよ」

 雅哉は眉間に皺を寄せた。


「ごめんなさい」

 私は、慌てて頭を下げた。


「大丈夫だよ。このくらいじゃめげないから。僕は僕のやり方で、美緒さんを落とすから」

 そう言って、彼は笑い出した。


 私もつられて、少し顔を緩ませた。

 また、彼の、優しさに救われた気がする……


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