手をつないでも、戻れない……
 横井さんを交え、明日の確認をする。

 写真を見せながら一つづ。


「明日は、伊藤さんが迎えに行きます。駅と本屋を通ります。十時に植山内科に行きます」

「はい!」

 横井さんは、元気に返事をする。


「困った時はどうしますか?」


「伊藤さんに困ったといいます」
 
 横井さんは、元気よく答える。


「泣いても、困ったままです」


「はい!」

 横井さんは、ニコリと返事をした。!




打ち合わせが終わると、私は、休憩室の椅子に腰を下ろした。

 こんな事は、よくある。

 だが、その度に、自分のやり方が正しいのか、悩まされる。

 甘い、我儘、そんな言葉が一番堪える。



「余計なことして、すみませんでした」

 後ろらの雅哉の声に慌てて立ち上がった。


「とんでもない。助かりました」

 私は頭を下げる。


「キツイですよね……」


「あっ…… コーヒーいかがですか?」



 私は、カウンターの上の紙コップに手を伸ばした。


「美緒さんは、間違ってないですよ」

 雅哉の言葉に、コーヒーを入れる手が止まった。


「そんな事、わからないじゃないですか?」

 私は、また、手を動かしはじめた。


 コップ注がれたコーヒーを雅哉に渡し、また、椅子に腰を下ろした。


「いつも思うんです。本当にこれで良かったのか? 他にやり方があるんじゃないのか?て……」


「大丈夫です。美緒さん間違っていません。だから、横井さんもあなたの言葉を信じる事が出来るんですよ。他の方達も同じです。そうでなければ、ここには誰も来ませんよ」


 雅哉の言葉に、思わず涙が出そうになるのをグッと堪えた。


「ありがとう……」


「今夜は、ぱあと気分転換に飲みませんか。この間の焼き鳥屋で!」


「えっ」

 断ろうかと思うが、焼き鳥の味が蘇り、ごくりとツバを飲み込んだ。


「じゃあ、待ってますね」


 雅哉は、私の返事も聞かずに、ご馳走様と紙コップをゴミ箱に捨て、行ってしまった。


 確かに、飲みたい気分だが……
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