手をつないでも、戻れない……
 彼の言う通り、自分に好意のある相手と一緒に居たんだから、彼が怒るのも仕方ない。

 だけど、このままでいいんだろうか? 


 過ちの恋にしがみついていて……


 でも、彼以外の人なんて、考えられない……



 電気も点けない、暗い部屋の中で、この気持ちが初めてじゃやない事に気付いた。

 これじゃ、十五年前と同じだ…… 


 これじゃあ、あの時と同じ繰り返しになってしまう! 

 先の事は分からないけど、あの時と同じ間違いは嫌だ! 


 そう、思った時、すでに私は走り出していた。


 駅までの道を、彼の姿を探しながら…… 


 長い階段を降りだした時、階段を走って上る、もう一つの影があった。


「美緒!」


「樹さん!」


 彼は、手を伸ばし私の手を掴むと、強く抱きしめた」



「ごめん、美緒…… 俺、また同じ事をするところだった」


 耳もとで、息を切らながら言う、彼の声は擦れていた。


「私も…… 十五年前の思いはもう嫌……」


「ごめんな…… 先の事はわからないけど、あの時の繰り返しだけはしたくない」


 彼は腕は、益々強く私を抱きしめた……



 そして、わからない先の答えが出るまでには、それほど時間はかからなかった。

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