手をつないでも、戻れない……
 休日、新しい服でも買おうと、少し離れたショッピングモールで一人買い物を楽しんでいた。

 仕事服と、プライベートの服をきっちり分けたい私には、ショッピングは楽しみの一つだ。


 あちらこちらの店を見ながら、買う物を定める。


 吹き抜けのエレベターを降りようとした時だった。


 反対側の通路に彼の姿を見つけてしまった。


 可愛らしい女の子と、後ろ姿で顔は良く見えないが綺麗な女性だと思った。

 娘が、彼の腕にからみつき、何かねだっているのだろう? 

 彼も笑って、奥さんの方を見ていた。

 だれが見ても微笑ましい家族の姿だ。



 彼が、ふとこっちに目を向けた。

 一瞬目が重なったが、彼は娘に呼ばれ、視線を戻した。


 私も、慌てて反対側へと隠れた。


 胸がドキドキして、息を落ち着かせるのに必死だった。


 三人の光景が、何度も目の前に現れる。




「僕って、タイミングがいいのか、悪いのか、分からなくなってきたな……」



 私の横で、壁に寄り掛かっているのは、雅哉だった。
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