=ウサギくんとオオカミさん=


「…海老名?」


俯いていた俺の耳に届く声。
名前を呼ばれたことにハッとして顔をあげると、見慣れた顔がそこにはあった。



「り、凛…」

「お前、何してんだ?」



店員の制服を着た凛が、不思議そうに俺を見る。
なんで凛が…。
なんでって、見たらわかる。

バイトしてるのは知ってたけど、ここだったっけ?



「凛のバイト先って…」

「あ?ああ…、最近増やしたんだよ。夏休みの間だけ」

「そ、っか…」



見られたくない。
こんな情けない俺を。

凛の姿を見てホッとしたと同時に、情けない自分を思い出して逃げ出したくなる。




「え?なに。てかその顔って、え、宇佐木じゃねぇ?」

「あ、マジだ。今お前の事話してたんだぜ!」

「あ?お前らなに」



ワッと沸いたように凛に声をかける男たち。
でも、凛は相変わらずの様子で冷静に受け応える。



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