=ウサギくんとオオカミさん=
虚像
皆が思ってるような、俺は人間じゃない。
「凛、本当にありがとう」
涙でぐしゃぐしゃの顔で海老名が言う。
いつだってヘラヘラしてお調子者の海老名。
それが偽りだと海老名はそう言ったけど。
俺はそうは思わない。
海老名はいつだって本音だったし、本気だった。
海老名がそう言うなら、偽りなのはずっと俺の方だ。
「じゃあな」
何か言葉をかける、なんてことは俺には出来なくて。
それでもやっぱり俺には出会ったころの海老名も、今の海老名も偽りには思えなくて。
それをどう言葉にしたらいいのかも、やっぱりよくわからなくて。
そのまま海老名を見送るしかなかった。