=ウサギくんとオオカミさん=


「聞いてねぇけど…、お前さ、なんで俺なんだよ」

「なんで…?好きになった理由という事でしょうか?」

「…ああ」



そんなこと聞いてどうすんだ。
そう思いながらも、その場の話題をどうにか続けようと口を走らせる。



「中学3年の頃、卒業間際…私、登下校に使う電車の中で痴漢に遭ってたんです」

「痴漢?」

「こんな地味でブスなのに…、変ですよね」

「いや、別に…」



大神は別にブスじゃねぇと思うし。
地味っていうのは認めるけど。



「一度声をあげたことがあるんです…、でも、すぐ逃げられてしまって、周りには変な目で見られました。あんな子が…自意識過剰だって…」

「はあ?」

「それで、辛くなって声も上げられなくなって、我慢するしかなくて…」




もうずいぶんも昔の事だろうに、その話を聞いて無性に腹が立った。



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