=ウサギくんとオオカミさん=


「でも、そんな私を助けてくれたのが宇佐木くんだったんです」

「…は?」

「痴漢をしていた人を捕まえてくれて怒鳴ってくれて、私を庇ってくれた…」

「記憶にねぇ」

「私、嬉しかったんです。高校で見つけた時は、運命だって思って、後悔したくなくて告白しました」




人の話を聞いていると、俺ってつくづく喧嘩っ早い男だったんだと思う。
大神の事にしろ、海老名の事にしろ、虎太郎ってやつの事にしろ。

全部、俺は護ろうとしたわけじゃない。
ただ、自分のむしゃくしゃした気持ちを晴らすためにちょうどよかっただけだ。
覚えてなくても、それはわかる。
覚えてないからこそ、そうなのだと断言できる。



「お前らは、俺を美化しすぎだ」

「そんなこと…」

「それは、ただの虚像で、俺はそんな人間じゃない。きっと、俺の本当の姿を知れば、お前だって幻滅する」



出来損ないの、イラナイ人間。
それが俺なのだから。




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