=ウサギくんとオオカミさん=
「凛にあんな過去があったなんて…」
「はい…。だから、あんなに可愛いって言われることに抵抗があったんですね…」
辛くて、苦しくて。
私が泣くのは筋違いだと思うのに、涙が止まらない。
こんなんじゃ、学校になんていけない。
「俺…、凛は強くてかっこいい奴だって思ってたし、そういうヒーロー像みたいなの押し付けてたのかも」
「そ、そんなの、私だって…」
「ん。凛の苦しみに、なんも気づいてあげられなかったんだな…」
凛くんは、ずっと一人で苦しんでいたのだろうか。
両親から離れた後も、きっとその傷は深く簡単には消えない。
いつだって強くて、少し乱暴で、それでも優しい凛くんでいるために。
どれだけその傷を隠してきたんだろう。
どうして…。
どうして、気づいてあげられなかったんだろう。
おこがましい思い。
そうわかってはいても。
そう思わずにはいられない。