=ウサギくんとオオカミさん=
「もういいよ、俺…もう疲れた」
「え…」
「面と向かって言ってくれよ。俺なんかいないほうがいいって。足手まといだって…」
姉ちゃんに引き取られてからずっと感じてた負い目。
姉ちゃんは自由になりたくて家を出て。
せっかくあの人たちから離れられたのに。
早く大人になりたかった。
早く一人で生きたかった。
でも、何歳になれば大人になれる。
もうこれ以上、足かせになりのは嫌なんだ。
俺だって幸せになれるとか。
幸せになっていいとか。
必要とされてるとか。
期待して裏切られるのはもう…。
自分の期待を誰かに押し付けるのも。
海老名や大神の優しさに忘れそうになる。
自分が必要とされない人間だってこと。
「凛!」
アパートを飛び出した。
外に出ると、無情にも大粒の雨が降り注ぐ。
俺は構わずにそのまま飛び出していく。