=ウサギくんとオオカミさん=
「お待たせしました!」
「ん…?」
待っている間、うとうとしていた俺は茉侑の声で目をあけた。
鼻をくすぐるいい匂いに、朝から何も食べていないことに気づいた。
姉ちゃんが昼に食べろって用意していた飯も、すっかり食いっぱぐれていた。
「卵粥です…。こんなものしかできないんですが」
「サンキュ。腹減ったし、嬉しい」
「はい。どうぞ!」
素直にそう答えると、茉侑は嬉しそうに笑って差し出す。
できたてだと物語る湯気。
一掬いスプーンで掬うと軽く息を吹きかけ覚ました後口に入れた。
鼻が詰まってるせいか味はよくわからなかったが、それが美味しいことはわかる。
味とかそういうんじゃなくて、いや、それもだが、茉侑の想いがそう感じさせた。
「…美味い」
「嬉しいです!たくさん食べてくださいね!」
「…なんで、こんなにしてくれんの」
「え?」
「俺、お前に何もしてやれてねぇのに。なんでここまで…」