=ウサギくんとオオカミさん=
「あら、いらっしゃい。初めまして。統太の母です」
「…どうも」
「凛くんよね。統太から話は聞いてるわ」
海老名の話に乗せられて、すっかり忘れていた。
コイツは実家暮らしだった。
にこやかな穏やかそうな母親に迎えられる。
海老名は母親似だ、目元がよく似ている。
「お夕飯は7時過ぎくらいで大丈夫?」
「ああ。いいよな、ウサギ」
「…ああ」
「じゃあ、それまで部屋でゆっくりしておきなさい。もうすぐテストでしょう?勉強もしなくちゃだめよ」
「わかってるって、じゃあ行くから」
きっと当たり障りのない、当たり前の親子の会話。
これが、きっとそうなんだろう。
「ほら、行こう、ウサギ」
「…ああ」
海老名に背中を押されながら、二回への階段を上る。
姉ちゃんには、海老名んちに泊まってくると連絡を入れた。
多分まだ仕事中で見ていないんだろう、連絡はない。