=ウサギくんとオオカミさん=
海老名の部屋は二階に上がって右側にあった。
中はとてもシンプルで、ブラウンを基調とした家具が置いてある。
「へぇ。綺麗にしてんじゃん」
「モノがないだけでしょ。ごちゃごちゃしてるの、好きじゃないんだ」
「ふぅん」
はじめてくる海老名の家。
少し落ち着かなくてソワソワする。
「初めてだな。…凛が家に来るの」
「あ?…そうだな。ってか、呼び方」
「だめ?母さんに話す時とかはそう呼んでるから」
よく人の呼び方をころころと変えられるもんだな。
俺は、今更こいつを下の名前で呼べと言われても、たぶん無理だ。
照れくさいっつぅか、なんか、違うっつぅか。
「凛って呼ばれるの、あまり好きじゃなさそうだから」
「…は?」
「でも俺は、凛と近い存在でいたくて、せめてあだ名でウサギって呼んでたんだけど」
「…なんで、」
「なんでって。凛って、結構顔に出るよ?」
…そ、そんなわけねぇ。
ポーカーフェイスを決めてるはずだ。
…できてねぇのか。