=ウサギくんとオオカミさん=


父親はまだ仕事だからと4人で席に着く。
妹は今小6らしい。

賑やかな食卓。
笑顔の絶えない海老名家の食卓。



居心地が、悪いと思った。
俺には、無縁の空気、雰囲気。




「凛くんは、お姉さんと一緒に暮らしているんだって?」

「…え、あ、はい」

「ご実家は遠いの?」

「……」



そうやって当たり前のように。
それが、普通で当たり前のもののように。




「…はい。県外なので」

「そう。いつでも家に遊びにいらっしゃいね。家族にはかなわないかもしれないけれど」

「そう言えば、凛の実家の話とか聞いたことないな」

「別に、面白いものじゃない」




海老名は、ここが当たり前の世界なのだ。
分かり合える、はずがない。





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