=ウサギくんとオオカミさん=
「凛の家族の話はさ。知らないけど。俺心さんの事は知ってるんだからさ」
「なんだよ、突然」
飯も食って風呂も入ってあとは寝るだけ。
ベッドの横に布団を敷いて横になると、海老名が改まって話し出した。
「心さんとケンカした時とか、気まずくなった時とか。もっと頼ってくれていいんだからな」
「…俺は別にそこまで弱くねぇよ」
「弱くなくても。…家に来てくれるって言ってくれたの嬉しかったんだ。断られるって思ってたから」
「それなのに誘ったのかよ」
「だって。誘ってみないとわからないじゃん。俺、やらない後悔よりやる後悔を選ぶって決めたんだ」
「なんだそれ」
海老名のよくわからない決心とか。
時たま見せる、メラメラと燃えるような闘志とか。
気づいていないわけじゃないけど、深く聞くつもりもなくて。
分かり合えるはずもないと、きっとこれまでの俺ならそこで終わっていただろう。
でも。
でも今は。
こいつの事なら、少しだけ信じて見てやってもいいかと思うようにはなった。