=ウサギくんとオオカミさん=


「で。さっきからお前、なんなんだ」




突然間近で聞こえる先輩の声。
僕はビクッと身体全体で震え、ハッとする。

先輩が僕を見ている。
しかも、こんな間近で!



「せ、せ、先輩!あ、あの!こんにちは!!」



震えあがりながらも声をあげ頭を下げる。
堂々としないと、と思うばかりで挙動不審になってしまう。




「は?先輩?…お前、一年か?」

「はい!!僕、お、俺!竜崎虎太郎って言います!よろしくおねがいしゃっす!」



噛んだ―――――!!!
入学式の日から毎日毎晩毎朝、何度も何度も練習してきた自己紹介なのに!



「名前にある竜と虎に見合うような、先輩みたいな強い男になりたいと思ってます!」

「竜と虎…?虎っていうより、子犬って感じだね柴犬?」



横からひょこっと現れた爽やかイケメンがバカにしたようにそう言った。
ゆ、許せない!
僕の事をバカにした!
しかも、先輩の前で!!


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