僕らのチェリー
序章「運命の別れ道」
もうどのぐらい走っているのだろう。
きのうの雨がまるで嘘のように太陽が雲の間から顔を出してさんさんと輝いている。
歩道にたまった雨水が純白のシフォンスカートにはねていないか何度も気にかけた。
待ち合わせ場所まで、あとわずか。
久しぶりに彼と会える。
「もう桜が満開なんだ。だからあした一足先に一緒に桜を見に行こう」
留守電のメッセージに残された彼からの誘いに、私は早くあしたにならないかなと、昨晩は何度も時計を見てはベッドから起きあがった。
おかげでらしくもない寝不足で少し頭が痛いけれど、今は彼と会える喜びのほうが痛みの辛さよりもはるかに上回っている。
春休みに入ってまだ数日しかたっていないというのに、もう長い間彼と会っていないようだ。そんな自分を重症だと思いながら、自然と顔はほころんだ。
やがて、坂の向こうで小さくだけれど桜が咲いているのが目にとれた。
彼の言った通り、桜は満開だった。
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