僕らのチェリー


「笠原はいるの?」


いつの間にかヨネの丸っこい目は澪に向けられていた。


「笠原は今好きな男いるの?」

「えっ」


真っ直ぐな視線に澪は彼から目を離せない。


「どうしてそんなこと聞くの?」

「いや秋谷の気持ちにすごく共感してるみたいだから。ちょっと聞いてみただけなんだ。
ごめん」


ヨネは小さく笑みを浮かべた。

それから「そろそろ行くか」と立ち上がって、出入り口へと向かおうとする。

澪は遠のいていくその背中に思わず呟いた。


「いる」


足を止めて彼が振り返った。


「あたし好きな人いるよ」
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