僕らのチェリー
「笠原ちょっと上がってけよ。冷たいジュース用意しとく」
青のTシャツに着替えたヨネが玄関から顔を出して手招きする。澪は促されるままに初めてヨネの家に入った。
彼がキッチンで飲み物を注いでいる間、澪はソファに座って周りをゆっくりと見渡した。
リビングボードに写真立てがいくつか飾られている。
「ねえ、あの写真に写ってるのってもしかして」
ヨネが戻ってくると、澪は入った時から気になっていた一枚の写真を指差した。少し色あせていたが埃は少しも落ちていなかった
「うん。おれと恭介」
「やっぱり。二人とも全然変わってない」
その写真は青いジャングルジムを背景に幼い顔をしたヨネと恭介が写っていた。
小学校の時に撮ったものらしい。
明るく笑っているヨネとは正反対に、恭介はぶすっとしてこちらを睨みつけているかのように見える。
「小さい時から恭介は無愛想だったんだね」
「でも昔も今もキョウはいい奴だよ。きょうのことだって、あいつは本当は悪気はなかったんだと思う」
ジュースを飲み干してヨネはいった。
「キョウにとって健二先輩は兄貴みたいな存在で、中学の時は世話になったらしいよ。
こんな事言うのもあれだけど健二先輩の家裕福でさ、よくメシとか奢ってもらってたって言ってた。
キョウんとこ母一人子一人で大変だろ」
「だから何を言ってもいいなんてあたしは思わない」
澪は強く言い放った。