僕らのチェリー


「昼間のことまだ怒ってんの?」


キョウに反省している様子が全く見当たらず、おれは呆れてしまった。


「当たり前だろ。笠原も怒ってたぞ」

「仕方ないじゃん。おまえらには悪いけど、おれは健二先輩にだけは逆らえねえんだ」

「だからといってあの言い方はないんじゃないか?秋谷のことを自業自得だなんておまえもう少しデリカシーってものを考えろよ」

「おれは本当のことを言ってるだけ」


キョウはお弁当とドリンクを手にすると、カウンターでそれらを置いた。おれは嫌々ながらもレジに戻る。


「お会計498円です」


小銭を受け取り、お釣りを渡す。

するとキョウは小さく言った。


「澪にごめんって伝えといて」


足早に店を出ようとするキョウをヨネは呼び止めた。


「自分で謝れよ」

「…連絡とれねえもん。ケータイかけても繋がんないし」


口を尖らせてキョウは頭を掻いた。素直じゃないところは昔から変わっていない。

ため息が出た。

笠原もキョウだと分かってわざと電話に出ないのだろう。


「悪いけどおれもちょっと笠原と微妙かも」

「なんで?」

「色々。だから自分で謝れ。以上」


おれは棚の整理にかかった。
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