僕らのチェリー
「あるよ」
返ってきた答えがあまりにも意外で、思わず目を見開いた。
「なんだよ。そんなに驚くことかよ。おれにだって人並みの感情はある」
キョウが俺を睨みつけた。それでもどこか照れくささがやや混じっているような、そんな表情だった。
「じゃあ帰るわ。おまえが変なこと聞くから雨降ってんじゃん。最悪。傘持ってきてねえし」
いつからか、外は強い雨で水溜まりが所々にできている。
おれは商品の傘をレジ打ちしてキョウに渡してやった。
「サンキュー」
「ちゃんと笠原に謝れよ」
「分かってるよ」
そうぶっきらぼうに言った後、キョウは傘を差しながら走っていった。
次第に雨音は強くなり、明け方近くになるまでずっと止むことはなかった。