僕らのチェリー
ヨネはしゃがみ込んで横断歩道を見つめた。
まだ耳奥で響いているバイクのブレーキの音。
きれいに螺旋を描いて飛んだ赤い箱。
ここで杏奈先生は泣きながらごめん、と謝った。
だからおれは答えた。
毎月毎月ここに来る度に手を合わせてはおれは大丈夫だよ、と何度も先生に想いを送った。
杏奈先生。
おれは大丈夫だから
だから
だからもう泣かないでと。
コンクリートの地面に滴り落ちたそれは黒い染みへと滲んでいく。
おれは大丈夫だから。
大丈夫だから。
あの日からずっとおれは自分にそう言い聞かせてきた。