僕らのチェリー


「恭介。あたしどんな気持ちであの写真を撮ったと思う?」

「写真?」

「ヨネの部屋にあったの。
あたしが撮ったヨネとアンナ先生の写真。
あたしがどんな気持ちでその写真を撮ったと思う?」


恭介の笑みが一瞬にして消えた。

写真の中で幸せそうに笑っている杏奈先生とヨネ。

きっと二人は知らない。


「二人が別れてくれたらいいのに。
二人が出会わなかったら良かったのに。
二人が…二人が…。
何度も何度もそう思いながらあたしはあの写真を撮った」


胸の奥が熱くなって視界が段々とぼやけていく。恭介の姿が二つに重なっていた。


「恭介は覚えてる?」


それは杏奈先生と最後の電話を交わしたあの日、今でもその日の情景は鮮明に覚えている。


「あしたのデート楽しんできてね」

「ありがとう」

「じゃあ、また明後日に」

「ええ、明後日に会いましょう」

「あ」

「どうしたの?」

「気をつけてね。あの場所は桜の名所だけど事故も多いから」


杏奈先生との電話を切った後、澪はすぐに恭介を呼び出した。あの日も今のように恭介は隣に座っていた。
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