僕らのチェリー
澪はリビングに戻り、冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出してコップに注いだ。
食卓の椅子に座って、水分を取り戻すかのようにコップ一杯一気に飲み干した。
やがて涙がぽたぽたと落ち始めた。
何の涙か自分でも分からない。
さっき十分に流したはずなのに涙はこれでもかというほどに溢れ出ている。
杏奈先生、ごめん。
心がずっとそう叫んでいる。
本当にごめん。
あの事故があった日から何度も
何度も。
「アンナ先生がいなくなってくれたらどんなにいいか」
もちろん、あの言葉は本気で言ったわけじゃなかった。
あの一言が原因で、杏奈先生が亡くなったわけじゃないことは分かっている。
澪はずっと自分を責めていた。
杏奈先生がいなくなれば自分が幸せになれるとあの頃のあたしはそう思ってた。
でも杏奈先生が本当にいなくなってその結果が今の現実だ。
ヨネはずっと深い傷を背負っていかなければならなくなった。
澪はそんなこと望んでいなかった。
好きな人が悲しむところを見たかったわけじゃなかった。
だからあんな言葉を軽々しく口に出してしまったことをひどく後悔した。
杏奈先生あっての彼なのに。
彼あっての杏奈先生なのに。
ごめん。先生。
ヨネ。
自分勝手だと知っていても、今はただ謝ることだけしかできなかった。
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