僕らのチェリー
家に帰って私服に着替えていると、机の上に置いてあった赤の冊子に目を移した。
ヨネに貸してもらった彼のアルバム。
一枚一枚捲ればそこには幼いヨネの成長記録が綴られていた。家族に愛されて育った生い立ちがよく伝わって澪は微笑ましい気持ちになった。
そしてヨネの隣で必ず写っているのが恭介だ。
このアルバムは彼の成長記録でもあった。
いつだったか幼い頃父親を亡くして、母親が働きに出ている間はヨネの家に預かってもらったと彼が話していた記憶がある。
屈託なく笑っているヨネと対称的に恭介はどの写真も笑っていなかった。無愛想にレンズを睨みつけて、その目は敵意に満ち溢れていた。
二人は対照的で、もしヨネを太陽と例えるとするなら、恭介はまるで影のようだと思った。
澪はそのアルバムを鞄の中へと入れた。