僕らのチェリー

きょうは九月四日。

杏奈先生の命日からちょうど5ヶ月が立った。

澪は約束したとおり、ヨネと一緒に並木道を歩いていた。

九月になると、夜は日中より気温が低い。

風が冷たく気持ちが良かった。

横断歩道の手前にある電信柱に花束を添えると、ヨネは目を閉じて手を合わせた。

澪は彼の後ろで、黙ってその様子を見つめていた。

まだ手を合わせることはできない。

一度は杏奈先生の存在を否定した自分にその資格はないと澪はずっと思っていた。


「そういえばキョウのおばさんが今朝退院したらしいよ」

「えっ本当に?」


青信号が点滅している。二人を乗せた自転車は止まり、信号が変わるまで澪は地面に降りた。


「きのうキョウがコンビニに来て、まだ油断はできないけどとりあえず今は家で安静してるって言ってた。
看病しなきゃいけないから当分学校に来れないってさ」

「そうなんだ」


澪はあの夕日の教室での恭介を思い出していた。
いつもと違った様子に、澪はあれから恭介のことが気がかりで仕方なかった。

それに今もポケットの中にある腕時計。

いつ取りに戻ってくるのだろうか。
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