僕らのチェリー


「キョウに比べたら、おれのさぼり癖なんて可愛いもんだよ」

「ああ、恭介ね。あいつ朝までバイトやってるんだっけ」

「うん、コンビニ」


恭介はめったに学校に来ない。

遅くまでバイトをしているせいか遅刻も多く、きょうは昼からの登校だった。


「あんなに稼いで、なにか欲しいものあるのかな」

「いやキョウん家は、複雑だから」

「そういえば母子家庭だったっけ」

「そう」

「ふうん」


クラスの中でも恭介の家庭事情は有名だった。

なんでも父親を早くに亡くし、「借金だけ残して逝きやがった糞親父」と恭介本人が周りに言いふらしているので彼の父親嫌いもまた有名だった。


「キョウは意地張ってるだけだよ。本当はおじさんのことも大好きなんだ。毎年欠かさずおじさんの墓参り行ってること、おれ知ってるから」


とヨネの目の横に笑い皺が浮かぶ。

恭介のことをよく知っている顔だった。
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