僕らのチェリー
翌日恭介は学校に来なかった。
奈美の席も変わらず空のままだった。
それから二日三日たっても一週間が過ぎても、教室に二人の姿はなかった。
時々電話をかけてみるものの留守番サービスに繋がるばかりで焦る気持ちが募った。
奈美は無事なのだろうか。
恭介はうまくやっていてくれるだろうか。
澪はポケットの中にしまっていた腕時計を取り出した。
時間が止まったそれは眺めているうちに、針が今にも動き出しそうに見えた。
今はただヨネの言うとおり恭介を信じて待つしかなかった。奈美が無事でいてくれることをひたすらに祈った。
それからあっという間に三週間が立ち、肌寒い季節に入った。きょうも教室に恭介と奈美の姿は見当たらなかった。
ヨネと一緒に帰って家で恭介や奈美からの連絡を待つことがいつの間にか日課と化していた。
そしてその日課はもう少しで終わろうとしていた。
ある日の夜、あしたから寒くなるとテレビから流れる天気予報を聞いて、澪はそろそろマフラーを出そうとクローゼットの中を整理していたときのことだった。
「ニュースです。
昨夜何者かの通報により、覚せい剤所持の疑いで複数の少年が逮捕されました」
澪は覚せい剤と少年という言葉に引っかかった。
そのニュースはこの辺りで起きた事件だった。
澪はテレビににじり寄った。