僕らのチェリー
「また中心格だった少年は当時交際していた17歳の少女を長期間自宅に閉じ込めていた監禁の疑いもあると見て、現在警察の取り調べを受けています」
女性アナウンサーは淡々とニュースを読み上げ、そして画面はコマーシャルに変わった。
心臓の鼓動が激しく波打っている。
監禁というあまりに現実離れした言葉に目が眩んだ。
まさか。
まさか、と思っていても脳裏に浮かぶのはあの男しかいない。
澪は急いで出かける準備を始めた。
ニュースによれば監禁された少女は無事に保護され、今は近くの病院に入院していると話していた。
吐息が雪のように真っ白い。
鞄の中から絶えず着信音が鳴り響いて、澪は自転車を漕ぎながらそれを手にとった。
相手はヨネだった。
「今病院にいるんだけど秋谷は元気にしてるよ。
早く笠原に会いたいって言ってる」
体中から気が抜けていくのを感じた。
受話器の向こうからヨネの明るく弾んだ声を聞いて安心したのだろう。
そしてニュースで言っていた少女が奈美だと確信を持った瞬間だった。
恭介のコンビニエンストアで会ったとき、視点の合っていなかったあの男の目はすぐに覚せい剤という結論に結びついた。