僕らのチェリー


「実はね、さっき武田健二の原付バイクに血痕が見つかったの」

「血痕?」

「そう。それがどういうことか分かる?」


奈美は心当たりがない様子だった。

女性が刑事だと気付いたのはそれからだった。
彼女は中島といって警察手帳を差し出した。どうやら武田健二の事件に深く関わっている刑事の一人のようだ。


「もしかしたら武田健二は過去にそのバイクでひき逃げした可能性があるかもしれないの。
それで今詳しく調べてるんだけど彼がなかなか自供しなくて。
あなたその事知ってる?」


奈美は知らないと答えるばかりで中島刑事は困ったように腕を組んだ。


「じゃあちょっと今会いたい人がいるんだけど、その人の居場所教えてくれるかな。
あなたと同級生で橘恭介っていう男の子いるわよね」


───ガシャン。

思わず澪は腕時計を落とした。

その音に驚いた中島刑事が振り返る。そして彼女は澪の元へゆっくりと近づいた。


「橘恭介のことあなた知ってるの?」


澪は唇を震わしながら小さく頷いた。

どうして恭介の名前が刑事の口から出るのか不思議でならなかった。
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