僕らのチェリー


「最低だよ、恭介。本当にばかだよ」

「どうして澪が泣くんだよ」

「悔しいからだよ。なんで止められなかったのかすごく悔しいからだよ。もうアンナ先生は二度と戻ってこないんだよ。
分かってるの?」

「分かってるよ」

「分かってないよ」

「分かってる」

「分かってねえよ、キョウ」


後ろを振り返った恭介の顔色が変わった。

そこには険しい顔をしたヨネが立っていた。話を全部聞かれたようでその表情は怒りで満ち溢れていた。


「おまえ、自分がなにをしたのかちゃんと分かってるのか。
人の命を奪ったんだぞ」

「分かってるよ」

「分かってねえよ」


彼は突然恭介に殴りかかった。

しかし恭介は避けなかった。

ヨネはやりきれない憎しみをぶつけるように拳を上げ、恭介はその拳を受け止めた。

何度も骨の当たる音が痛々しかった。
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