僕らのチェリー
「米原君からいろいろ聞いてるわよ。
最近他校の男の子とよく夜中に会っているそうじゃない。
彼がそうなの?」
ヨネのやつ。
人のことを勝手にべらべらと。
おれを心配していてくれるのは分かるが、わざわざ彼女に言う話でもないだろうと思った。
彼女も彼女だ。
おれの幼なじみだからといってヨネに話を聞くのはどうかと思う。
聞きたいことがあるのならおれに直接言いに来ればいいのに。
「別に先生には関係ないだろ。
おれのことなんかほっとけよ」
おれは苛々した感情をぶつけるように冷たく言い放った。
「あの子と付き合うなとまでは言わないけど、先生はあまり歓迎しないわね。米原君の話によると評判がよくないそうじゃない」
「だからなんだよ。先生におれの友達選ぶ権利あんの?」
「そうじゃないの。
ただ米原君があなたのことを心配してるのよ。
橘君はあの子に逆らえないから従っているんだってそう言ってた。
もしそれが本当ならあの子はあなたの友達とは言えないんじゃないかな」
おれは口を噤んだ。
彼女はいつになく真剣な表情でおれをじっと見つめていた。
まるでその栗色の瞳に日々の行いを見透かされているようで、今ポケットの中にある三枚のお札が重くのしかかった。
おれは黙っていると、彼女は店内を回ってあらゆる商品を籠の中に詰め込んだ。
ゆうに、三千円分はある量だった。
「はい、あなたにあげる。
高校生なんだからもっと健康的なものをしっかり食べて体力つけなさい。じゃあまたあした、学校でね」
彼女はおれに袋を渡すとそういって店を出ていった。袋の中身は彩り弁当やサラダがたくさん入っていた。